
猫は夜行性だからうるさいのは仕方ない、と思われがちですが、実際には猫は「薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)」という行動パターンを持っています。これは夕暮れや早朝など薄暗い時間帯に活発になる習性のことで、夜中ずっと鳴き続けるのとは本来少し異なります。それでも子猫が一晩中泣き止まないという状況は決して珍しくなく、新しい家に迎えたばかりの頃に特によく起こります。鳴く理由はひとつではなく、子猫の成長段階や環境、健康状態など複数の要因が絡み合っているのです。
母猫や兄弟から引き離された寂しさと不安
子猫が家に来てからしばらくの間に夜鳴きが激しくなる最大の理由は、それまでいっしょに過ごしていた兄弟や母猫から離されて、知らない場所に連れてこられた寂しさと不安です。猫は環境の変化をとても苦手とする動物です。これまで当たり前のように感じていた母猫の温もりや兄弟のにおい、耳に馴染んだ音など、すべてが一度に失われる状況に置かれた子猫がパニックに近い状態になるのは無理のないことです。
特に、母猫と別れた直後や里子として引き取られてすぐの時期は、夜に限らず鳴き続ける場合もあります。飼い主側は「なぜこんなに泣き止まないのか」と不安になりやすいですが、こうした鳴き声の多くは環境に慣れるにつれて自然と落ち着いていきます。1カ月ほどで、新しい環境にも慣れてピタッと夜泣きが収まることも多いので、深刻に考えすぎず見守ることも大切です。
空腹や生理的な欲求による鳴き声
子猫は成猫と比べて胃が小さく、一度に食べられる量が限られています。そのため、生後1か月未満の離乳していない子猫は、お腹が空いたり寂しくなったりすると、母猫や飼い主さんを探して夜鳴きをする場合があります。
また、ある程度育った子猫でも、食事の回数が少なかったり量が足りていなかったりすると、夜中に空腹感から鳴き始めることがあります。毎朝決まった時間に甲高い声で鳴いているならば、お腹が空いたからご飯ちょうだい、と要求している可能性が高いです。「飼い主が起きる=朝ごはん」という習慣が定着してしまうと、朝の早い時間から鳴いて飼い主を起こすようになるため、食事の与え方を工夫する必要があります。
運動不足とエネルギーの発散ができていない
室内飼いの子猫は外に出られない分、動き回れる範囲が限られています。室内飼いの猫は運動不足になりがちのため、夜中にエネルギーを発散しようと夜鳴きをしたり走り回ったりします。日中に十分遊んでもらえなかった子猫は、体の中にエネルギーが余った状態のまま夜を迎えるため、鳴いたり走り回ったりすることでそのエネルギーを発散しようとします。猫の持つ狩猟本能が満たされないことでストレスが蓄積しやすく、これが夜の過剰な鳴き声につながるケースも多くあります。
トイレの問題や環境への不満
猫はきれい好きな動物として知られていますが、子猫も例外ではありません。トイレに排泄物が残っているのを嫌がる猫もいます。そんなときに、トイレが汚れているのを不満に感じ、鳴いて訴えてくる猫がいるのです。夜間は掃除が難しいため、就寝前に必ずトイレを清潔な状態に整えておくことが重要です。トイレ以外にも、寝床の場所や素材、室温、照明の明るさなど、生活環境全体への不満が鳴き声として表れることがあります。
病気やケガが原因の場合もある
鳴き声が単なる不満や要求ではなく、体の不調を訴えているケースもあります。病気やケガをした猫が、痛み、不快感、倦怠感、違和感などを訴えるために鳴き続けることがあります。咳や嘔吐、下痢といった目に見える症状が伴っていれば気づきやすいですが、視覚や聴覚の異常など症状がわかりづらい場合は、不安やストレスから叫ぶように鳴くことがあります。子猫がいつもより激しく、あるいは聞き慣れない声で鳴き続けるときは、体のどこかに不調が隠れている可能性も念頭に置いておきましょう。
発情による鳴き声
「子猫なのに発情?」と驚く方もいるかもしれませんが、猫の性成熟は生後1年経たずに始まります。早い場合は、生後半年で発情します。発情期に入ると、オス猫はメス猫のフェロモンを感じ取って大きな野太い声で鳴き、メス猫は異性を呼び寄せるために激しく鳴き続けます。発情による行動が活発化するのは夕方から明け方にかけてであるため、深夜から早朝にかけて大きな声で鳴き続ける状況が起こりやすくなります。これは本能的な欲求で、猫自身は抑えることができないとても強い欲求です。
夜鳴きを鎮めるための対処法
不安を和らげる環境づくり
家に迎えたばかりで不安から鳴いている場合は、まず子猫が安心できる環境を整えることが先決です。寝るときはケージに毛布をかけるなどして刺激をさえぎり、落ち着けるような環境を用意しましょう。やわらかく寝心地の良いベッドを用意して、快適な空間とすることも大切です。また、飼い主さんの匂いが付いた衣類やタオルを寝床に一緒に入れてあげると治まる場合があります。母猫や兄弟がいた環境で使われていたタオルや毛布のようなものがあれば、それを寝床に置いておくことも子猫の気持ちを落ち着かせる助けになります。
夜、独りぼっちになってしまって鳴いている場合、一緒に寝てあげる方が安心するかもしれません。ケージの隣に布団を敷いて寝るか、寝室に寝る時用のケージを用意し、飼い主さまの寝息が聞こえる状況、気配を感じる状況で寝かせるのがよいでしょう。
要求には安易に応じない
寂しい、遊んでほしい、かまってほしいという欲求から来る鳴き声に毎回すぐ応じてしまうと、「鳴けば来てくれる」という認識が定着し、鳴き声がエスカレートしていく可能性があります。かわいそうだからと構いがちですが、鳴けば構ってもらえると子猫が勘違いをして、さらに夜泣きが続く場合もあります。子猫が諦めて自然に落ち着くまで、構わないことが大切です。これはひどく聞こえるかもしれませんが、子猫が人間の生活リズムに慣れていくためには必要なプロセスです。
日中にしっかり遊ばせる
日中や夕方にしっかりと遊んであげることで、夜中に活動的になるのを防ぐことができます。愛猫が夢中になれるおもちゃを使って遊んであげることで、しっかり運動量を確保してあげましょう。特に就寝前に猫の狩猟本能を刺激するような動くおもちゃを使って遊んでやり、適度に疲れた状態で眠りにつかせる習慣をつけると、夜間の鳴き声が減りやすくなります。猫は持久力がないため、遊ぶ時間は10〜15分ほどでも十分です。
食事と生活リズムの見直し
夜中や早朝に空腹から鳴く場合は、食事の与え方を見直すことが効果的です。具体的には、寝る前に少しだけフードを与える、食事の時間を遅くする、食事の回数を増やすといった方法があります。自動給餌器を活用して、深夜や早朝の時間帯に少量のごはんが出るよう設定しておくことも、空腹による夜鳴きを減らす手段として有効です。
避妊・去勢手術の検討
発情が原因の鳴き声に対しては、根本的な解決策として避妊・去勢手術があります。発情期前に手術をすると、大声で鳴くなど発情による困った行動を抑えることができます。手術には麻酔のリスクも伴うため、時期や方法については事前にかかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。なお、避妊・去勢手術には、オス猫であればスプレー行為がなくなる、穏やかな性格になるといったメリットがあります。また、メス猫は発情期のストレスから解放されますし、卵巣や子宮などの生殖器の病気予防にも効果的です。
動物病院への受診を迷わない
環境を整えても、遊ばせてみても、一向に鳴き止まない場合は、何らかの病気が隠れている可能性を疑うべきです。対策をしても猫の夜泣きが続いてしまう場合でも、大きな声で怒鳴って叱ったり、叩くなどをして止めさせようとしないでください。猫が余計に追い詰められてしまい、ストレスを溜め込んでしまう可能性があるためです。鳴き声の質が明らかに変わった、体重が落ちてきた、食欲の変化があるといった症状が重なるときは、早めに動物病院で診てもらうことが子猫の健康を守ることにつながります。