
子猫を迎えてまもない頃、爪切りをしようとした途端にジタバタと暴れ出したり、シャーッと威嚇されたりして困り果てたという経験をお持ちの方は少なくないはずです。でも、これは子猫の性格が悪いわけでも飼い主さんの腕前が足りないわけでもありません。猫にとって、足先を人の手でつかまれること自体が本能的に不快なのです。
まずはなぜ爪切りが必要なのかを理解しておきましょう。
室内飼いの猫に爪切りが欠かせない理由
室内で飼われている猫は、木登りや狩りをする必要がないため、爪が自然に削れる機会がほとんどありません。そのままにしておくと爪が伸びすぎてしまい、カーテンやカーペットに引っかかって根元から折れて出血したり、肉球に食い込んで炎症や化膿を起こしたりする可能性があります。
「爪とぎをさせているから大丈夫では?」と思われる方も多いのですが、これは誤解です。爪とぎは古くなった爪の層を剥がして新しい爪を前面に出す行為であり、爪自体の長さや鋭さはそのままになります。爪とぎと爪切りはまったく目的が異なるものなので、どちらも行う必要があります。
爪切りをさせてくれない猫が高齢になってきたとき、分厚く伸びた爪が肉球にゆっくりと刺さってしまい、出血してからようやく爪の異変に気づくというケースも多いです。将来のトラブルを防ぐためにも、子猫のうちから少しずつ慣らしていくことがとても大切です。
いつから始めれば良いか
子猫はまだ爪を引っ込める靭帯が未発達なため、爪が出しっぱなしになっていることが多く、一緒に遊ぶと生傷が絶えないという飼い主さんも少なくありません。爪がしっかりしてくる生後1か月を過ぎたら爪切りを始めるのが望ましいとされています。
爪切りは、どんなことでも受け入れてくれやすい社会化期(生後2~3週齢から9週齢ごろまで)にスタートしておけると理想的です。この時期の子猫は新しい経験を受け入れる柔軟性が高く、「足先を触られること=怖いこと」という記憶が定着する前に慣れさせることができます。
猫用爪切りの選び方
初めて道具を選ぶとき、どれを買えばいいか迷うものです。猫の爪を切るための道具はハサミ型、ニッパー型、ギロチン型、電動やすりなどさまざまな種類があります。はじめて猫の爪を切る飼い主さんには、ハサミ型やニッパー型など日ごろから使い慣れている形のものが扱いやすく、子猫や爪のやわらかい猫にはハサミ型が切りやすいとされています。
ギロチンタイプは音がしないことから音が苦手な猫に最適ですが、ハサミタイプは初めて爪切りをする方や慣れていない方におすすめです。人用の爪切りは、猫の爪の形が人の爪とは大きく異なるため途中で割れてしまう可能性があることから、あまりお勧めできません。
爪切りを始める前の準備
いきなり爪切りをしようとしても、子猫はびっくりして逃げ出してしまいます。はじめから爪切りをするのではなく、数日間は手先をちょっと触ったら液体おやつなどのご褒美を与えるなどして、手先を触られることにしっかり慣れてもらいましょう。
突然の爪切りに怖がる猫もいるので、前もって爪切りを見えるところに置いておくことで見慣れさせておくことも効果的です。道具そのものを「怖いもの」と認識させないための工夫です。万が一の出血に備えて、清潔なガーゼやコットン、あれば止血剤をあらかじめ用意しておくと、慌てずに対処できます。
爪の構造と切っていい場所の見分け方
安全に爪を切るためには、まず猫の爪の構造を理解しておく必要があります。猫の爪の内側の根元に見えるピンク色の部分は「クイック(quick)」と呼ばれ、神経と血管が通っています。このクイックを傷つけてしまうと出血し、猫に痛みを与えてしまいます。一度でも痛い思いをすると、その後の爪切りをより強く拒否するようになってしまうため、ここだけは絶対に避けなければなりません。
爪の指に近い位置にうっすらと見える血管(クイック)から2mm以上先端側を切ることが基本です。慣れないうちはもっと余裕を持って先端を切るだけでも十分です。
爪が黒っぽい猫でクイックの位置がわからない場合は、爪の下から懐中電灯で照らすと確認できることがあります。また、爪が黒い猫の場合は肉球の高さを目安に切るとうまくいきます。
実際の切り方と体勢
子猫を後ろから抱え込むように抱っこすると安心しやすいです。やさしく声をかけながら落ち着くまでなでてあげましょう。足をギュッと持たずに、やさしく肉球を押して爪を出します。
切る順番にも工夫があります。多くの猫は前足の方を嫌がるため、先に後ろ足から切るとスムーズです。また前足では内側(親指側)の爪の方を嫌がることが多いため、外側の爪から切り始めるのが得策です。
前足の爪を切る際、左前足は飼い主さんの右腕方向、右前足は左腕方向に引き寄せると、体勢が固定されて切りやすくなります。
スピードも重要なポイントです。爪切りに時間をかけすぎると子猫も飽きてしまいますし、どんどん不安になってしまいます。爪切りは手早く終わらせるのがコツです。慎重になるあまり少しずつ何度も切っていると時間がかかってしまうので、スパッと一度で切るようにしましょう。
切る時以外は爪に触れないようにしましょう。躊躇して何度も触れていると猫がイライラし始めます。また切れ味の落ちた爪切りはすぐに交換することをおすすめします。
どうしても嫌がるときの対処法
すべての爪を一度に切ろうとして時間をかけると、猫がイライラして暴れだすこともあります。「今日は1~2本だけ」など何度かに分けて切るのも有効な方法です。
洗濯ネットで包んで手肢だけを出して爪を切ると、猫が安心して落ち着きやすくなります。バスタオルで体を優しく包む方法も効果的です。
爪切りの最中にしっぽをパタパタさせ始めたら、ご機嫌ななめのサインなので中止しましょう。無理に続けると爪切りへの嫌悪感が強まるばかりです。
爪切りを終えたらたっぷり褒める
爪切りが終わったら「よく頑張ったね」とたっぷり褒め、ご褒美のおもちゃやおやつをあげましょう。爪切りのあとに必ず良いことが起きると子猫が学んでいくことで、少しずつ爪切りへの抵抗感が薄れていきます。「嫌なこと」ではなく「終わったら楽しいこと」として記憶に残るよう工夫することが、長い目で見て最も効果的な習慣づけになります。
どうしても自宅での爪切りが難しい場合は、無理に続けるより動物病院やトリミングサロンでプロにお願いする方法もあります。プロの手技を間近で見ることで、飼い主さん自身が正しいやり方を学ぶ機会にもなります。