
子猫が下痢をしたとき、「少し様子を見ればよいか」と迷う飼い主さんは少なくありません。しかし、下痢が起きたらどれくらい様子を見ても良いかの目安はなく、なるべく早く動物病院を受診することが推奨されています。成猫であれば一時的な下痢が自然に回復することも多いですが、子猫はまったく事情が異なります。
子猫は免疫力が弱い
子猫は免疫力がまだ十分ではないため、細菌やウイルス・寄生虫などの感染症にかかりやすく、環境の変化などによって体調を崩しやすい面があります。また、身体が小さく体力も十分でない子猫は、はじめは軽度な症状でもすぐに重症化してしまいやすいため、気になる症状がみられたときは早めに動物病院を受診することが大切です。
離乳期には液状のミルクから固形食に変わることで胃腸が対応しきれず、また母猫の移行抗体が消失する時期と重なるため、さまざまな感染症に罹患しやすくなり下痢を発症しやすくなります。このように、子猫には下痢を起こしやすい生理的な背景があり、その上で免疫面も脆弱であることを念頭に置いておく必要があります。
すぐに受診すべき症状とは
子猫の下痢は、水様便、血便、嘔吐や発熱を伴う場合など、様子を見ずに速やかな受診が必要なケースがあります。特に水のようにさらさらとした便や、噴水状に勢いよく排泄される下痢は、急性胃腸炎や感染症の可能性が高く、急激な脱水を引き起こす恐れがあります。
黒色の下痢は「メレナ」とも呼ばれ、口や鼻、胃、小腸などから出血し、うんちに混ざって出てくるまでに血液が黒くなるものです。感染症や消化管の異常、異物の誤飲誤食などが考えられるので、早めに動物病院を受診する必要があります。また、下痢と同時に元気がなく、食欲がまったくない場合や、体重が急激に減っているような場合も、内臓疾患や重篤な感染症が隠れている可能性がありますので、躊躇なく受診してください。
原因① 食事・消化不良
子猫の下痢のほとんどは食事に起因するとされており、ミルクから離乳食に変えることで下痢を起こすケースは珍しくありません。固形のフードに切り替えるタイミングや、新しいフードへの移行期間が短すぎると、消化器官への負担が大きくなります。
フードの種類を変更したタイミングや、特定の原料が入ったフードに変えたときに下痢を起こす場合、食物アレルギーの可能性があります。また、開封してから時間が経ったフードは劣化しているため、下痢の原因になることがあります。食事に関連した下痢の場合、フードを元に戻すと治まることがありますが、腸管内のアレルギー反応が治まるまでに2週間ほどかかることもあります。やみくもにフードを変えると診断が困難になるため、動物病院で体質に合ったフードを選んでもらうことが大切です。
また、猫が食べてはいけないものを食べてしまった場合、命にかかわるケースもあります。ネギ類に含まれるアリルプロピルジスルフィドという物質は猫の赤血球を破壊し、中毒症状や下痢、嘔吐などを引き起こします。生肉や生卵も細菌感染を引き起こしやすく、下痢の原因となります。
原因② ウイルス感染
ウイルス性の下痢では、猫パルボウイルスや猫コロナウイルスが原因として挙げられます。猫パルボウイルス感染による猫汎白血球減少症や、猫コロナウイルスが突然変異して起こる猫伝染性腹膜炎は、致死性の高い感染症です。
パルボウイルス(猫汎白血球減少症、または猫伝染性腸炎)は最も怖い病気のひとつで、下痢と嘔吐がいっぺんに起こります。命を落としてしまうこともあるほど重大な病気であり、このウイルスは感染力が非常に強いため、同居の猫がいる場合には隔離する必要があります。この感染症にはワクチンがあるため、あらかじめ予防接種をしておくことが大切です。
ワクチン接種歴のない子猫の場合、こうしたウイルス性感染症のリスクは特に高くなります。ワクチン接種歴のない子猫が下痢で病院を受診する際は、事前に電話連絡をして受診のタイミングを相談することが推奨されています。これは、院内での他の猫への感染拡大を防ぐためでもあります。
原因③ 細菌感染
サルモネラ菌やカンピロバクター菌に汚染されたものを口にすることで感染症にかかると、腸炎を起こして下痢になります。成猫の場合は感染していても症状が出ないことが多いのですが、体力や免疫力が低下すると発症しやすくなります。特に子猫は免疫機能が未発達なため、成猫では問題にならないレベルの細菌量でも発症してしまうことがあります。
細菌性腸炎の症状は急性の嘔吐、粘液を含む便や鮮血のついた便、発熱などですが、軽症であれば抗生剤・整腸剤・下痢止め・吐き気止めなどの薬で通院治療となります。重症で食事が取れない状況や脱水が起きている場合は、静脈点滴を行いながら入院管理が必要となります。通常は1週間程度で回復が見込めます。
原因④ 寄生虫感染
猫回虫、犬小回虫、猫鉤虫、猫条虫、瓜実条虫、マンソン裂頭条虫、コクシジウム、ジアルジア、トリコモナスなどの寄生虫が原因となって下痢を引き起こすことがあります。寄生虫感染は、感染した猫の便を口にする、感染した母親から母乳でうつる、感染したノミや小動物を食べるなど、寄生虫の種類によってさまざまな経路があります。
コクシジウムや回虫などの寄生虫が子猫の腸内に寄生し、下痢を引き起こします。母猫の母乳や便から感染するため、生後数ヶ月までの子猫によくある症状です。原因が判明したタイミングで駆虫による治療が行われるのが一般的です。外で生活していた経験のある子猫や、保護猫として迎え入れた場合には、症状がなくても一度は検便で確認することが推奨されます。
原因⑤ ストレスや環境変化
環境の変化(引っ越し、季節の変わり目、来客など)により一時的にストレスがかかると、免疫力の低下により腸内細菌のバランスが崩れるため、下痢を起こしやすくなります。そのようなタイミングで下痢をした場合、猫のストレスに配慮することで便が改善することがあります。
新しい家に迎えられたばかりの子猫は、環境の変化そのものが大きなストレスになります。部屋の模様替えや家族が増えたり、新たな飼育猫が加わったりすることでストレスを感じる場合があります。環境に慣れることでおさまることが多いですが、長く続く場合はストレスだけが原因でない可能性も考え、獣医さんに相談することが大切です。
受診時に持参すべきもの・伝えるべきこと
動物病院を受診する際には、できるかぎり便を持参するようにしましょう。検査に使用するのはなるべく新鮮な便が理想ですが、前日の便も念のため保管しておくとよいでしょう。糞便検査にはさまざまな方法があり、主に院内検査ではウイルスや寄生虫の有無を確認でき、簡易キットを使用してパルボウイルスが原因の下痢ではないかチェックすることもあります。
診察では、フードやおやつ等の内容、生活習慣や飼育環境などについて聞かれることが多いので、フードの種類や量などを確認してから受診するとスムーズです。加えて、下痢はいつ頃から何回あったか、便の色・形状・においの変化、水を飲む量の変化、同居しているほかの動物の有無なども整理しておくと、獣医師が診断を進めやすくなります。お家にほかの猫や犬がいる場合、またどのような環境で暮らしていたか(野良だった、ペットショップにいたなど)、子猫の過去の環境も診断の参考になります。